奈良遺産70
奈良遺産70

奈良遺産70

01

人っぽい奈良公園の鹿

写真提供:トラベルjp<たびねす>
 旅行ナビゲーター:いずみ ゆか
観光客におじぎをしてせんべいをねだる姿や、夏場に冷気の残る道路の側溝で涼む様子はどこか人間的。当たり前のように奈良の街を闊歩し、横断歩道ですれ違っても奈良の人は意に介さない。赤信号で立ち止まる鹿もいるという。人と野生の鹿が共生する光景は県外や外国の人から不思議がられる。1300年間続く平和の証しだ。



02

奈良公園のディアライン

正倉院南側で「おかっぱザクラ」の名で親しまれるベニシダレザクラ。鹿は桜の花が好物といわれ、背が届く高さまで花や枝を食べてしまうために枝ぶりが、きれいに切りそろえた「おかっぱ」の髪型に似て見えることから付いた愛称。奈良公園の樹木は鹿が食べることのできる高さまで横一線に刈りそろえたように見え、「ディアライン」と呼ばれる。


03

色町の風情が残る町並み 木辻(史料保存館にて問い合わせ)

日本最古の遊郭といわれる。古くは平城京遷都で都建設に従事するために集った多くの建築作業員を目当てに設置されたとの説もある。井原西鶴の「好色一代男」にも記述がある。明治期には華やかな色町が形成された。東京の吉原遊郭が誕生した際には木辻から遊女が送られたといわれる。今でも町並みの一部に往時の面影を残している。

※場所は市立史料保存館を設定しています。詳細は、市立史料保存館にてお問い合わせください。 休館日:月曜 午前9時30分~午後5時。(入館は午後4時30分まで)



04

奈良のため池

大和平野一帯はため池の密集地帯。少雨で大河川がないため水不足対策として造られた。近世以前は集落単位でため池を造り水を確保した。複雑な水利慣行は現在も生き続けていて、地域ごとにため池の管理を担っている。昭和28年に13000以上あったが現在は開発化で約5800ヵ所に減った。風光明媚な奈良市の蛙股池は県内最大級。


05

大雨のあと側溝にあふれる金魚(金魚資料館付近)

金魚の名産地大和郡山市内の金魚養殖場付近では大雨の後、側溝や田んぼなどで水とともにあふれた金魚が泳ぐ姿が見られる。市民は見慣れているが他の地域では不思議な光景だ。近所の子どもたちは網とバケツを持ってあふれた金魚を捕って遊ぶ。このときばかりは養殖業者も黙認するという。金魚と市民の暮らしは密接にかかわっている。


06

竜田川の紅葉

竜田川は生駒山東麓から斑鳩町を流れ大和川に注ぐ。竜田川の紅葉は古くから有名で、その様子を詠んだ歌が百人一首に2首も収められている。今でも竜田大橋周辺は紅葉の名所。魚や肉を醤油やミリンなどに漬け込み片栗粉をまぶして揚げた唐揚げ「竜田揚げ」は醤油の赤色に片栗粉の白が竜田川に浮かぶ紅葉の葉からついたといわれる。


07

青垣遠景

「やまとはくにのまほろば たたなづく青垣(あをかき)やまごもれる やまとしうるはし」。ヤマトタケルノミコトが故郷を思い詠った。現代の県民も同じ思いを持っているのではないか。日々の暮らしの中でふと遠くに視線を上げると青い山々の連なりが目に入る。いつの時代も青垣は生活に潤いをもたらし心にゆとりを感じさせてくれる。


08

山の辺の道(拠点:天理市トレイルセンター)

奈良盆地の東南に位置する三輪山から北へ連なる山裾を縫うように続く。全長約35キロメートルで幅2メートルほど。日本最古の道といわれる。沿道には石上神宮、大神神社、長岳寺、崇神天皇陵、景行天皇陵、金谷石仏、万葉歌碑など歴史的文化遺産が点在する。現在はハイキングコースとして名高く全国から歩きに来る。柿や野菜などを販売する地元の人との交流が楽しい。

※場所は山の辺の道の拠点となる、『天理市トレイルセンター』を設定しています。開館時間/午前8時30分~午後5時



09

日本文化の礎 竹内街道

二上山の南麓竹内峠を越えて葛城市の長尾神社付近に至る約26キロメートルの道。大和と河内の国を結ぶ古代の幹線道路で日本最古の国道といわれる。沿道には応神・仁徳・推古天皇など有力者の古墳があり物資輸送や文化伝達の道として重要な役割を果たした。難波から上陸した大陸や朝鮮の先進文化はこの道から大和に伝わり、日本文化の礎となった。


10

飾り瓦の町並み 今井町

町の6割が伝統的建造物として残る日本でも有数の歴史的市街地で、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。中世末期に一向宗の寺内町として成立し江戸時代は商業都市として発展。家々の屋根には魔除けの鬼や破邪と防火の唐獅子、商売繁盛の恵比寿天や大黒天、子孫繁栄の鶴亀など約100ヵ所に意匠を凝らした飾り瓦が見られ、往時の栄華が垣間見える。


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秋になっても咲く生蓮寺の蓮

生蓮寺の蓮は6月中旬から10月まで見ることができる。蓮の研究者でもある副住職が品種改良に取り組み、107種も栽培されている。訪れる時期により咲く品種が異なるため、いつ行っても別の花が楽しめる。蓮の種の無料配布やもらった種を増やして返す里帰りプロジェクトなど参拝者が蓮に親しんでもらう取り組みも行われている。


12

高見山の霧氷

山容から「関西のマッターホルン」と呼ばれる。1249メートルの山頂は厳冬期、霧が凍り樹木に堆積してできる霧氷ができ、幻想的な光景を作り出す。雪山だがアイゼンを着用すればそれほど難しくなく、関西一円から登山客が訪れる。この時期は臨時バスを出すほどの盛況ぶりだ。最近はスノーシューイングツアーの人気が高まっている。

※場所は高見山の登山口を設定しています。



13

日本最古の人工林「下多古村有林」(役場にて問い合わせ)

江戸時代に植林され、手入れする人工林としては日本最古といわれる。面積約3700平方メートルの山肌に、樹齢280~380年の杉や檜が林立し、大きな杉では胸高直径164センチ、幹回り515センチ、高さ約50メートルにもなる。県内初の文化財建造物の修理用資材のモデル供給林や研修林となる文化庁の「ふるさと文化財の森」に選定された。

※場所は川上村役場を設定しています。人工林の詳細については役場でお問い合わせください。



14

大峰奥駈道

修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が開いた。吉野と熊野を結ぶ全長約170キロメートルの長大な「修行の道」。今なお女人禁制の山上岳や、近畿最高峰の八経ケ岳など険しい山岳地帯を行く。道中には75ヵ所の行場や拝所が続く。平成16年には「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録された。昨今、人気のあるロングトレールの先駆け。

15

雲海景勝地 野迫川村(天狗木峠)

海なし県の奈良だが雲の海は広がっている。県内各地の山間部で観られる雲海の中でも野迫川村の雲海は他に類を見ない雄大さが魅力だ。標高700メートルの同村は秋から春までの時季に多く発生する。いくつかのポイントがあり、いろんな構図が楽しめる。日の出の雲海は波のように動き、まさに大海のよう。県民にも知られていない雲海景勝地だ。

※場所は吉野郡野迫川村の天狗木峠、高野辻、高野辻下、立里荒神社などの雲海ポイントの1つ「天狗木峠」を設定しています。


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大台ヶ原

標高1695メートルで吉野熊野国立公園の1つ。三重県との県境に広がる天空の大地。年間降雨量5000ミリという多量の雨水を誇る気象が生み出した豊かな自然が評価され、昭和55年、ユネスコパークに登録された。日出ヶ岳や大蛇嵓など展望地がある東大台と、原生林が広がる西大台の2つに大別され、西大台の入山には事前手続きが必要。日本百名山の一座。

各スポットの番号は「奈良遺産70」冊子と連動しております。

情報提供:奈良新聞社




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