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ヒカリ(2/4)

(――あいつと出会ってから、慧は変わったよな)

もう自分が側にいなくても大丈夫なんだと、思えてしまえるほどに。

浮かんだ思いに、ツキンと胸が痛んだ。

同時に、宗教学の教師である天童瑠璃弥から言われた言葉が胸をよぎる。

『自らを愛しなさい。これまでの自分を否定するなんて愚かなこと。目を閉じたまま足を踏み出しても転ぶだけ』

『迷える子羊よ、きみは愛されている! ならば、自分をもっと愛しなさい! ――ハッ!』

一連の言葉の結びに、華麗に決められたジャケットプレイの様子までが鮮やかに脳内再生されて、顔をしかめる。

(ほんと……天童せんせいってば、ムカつくこと言ってくれちゃうよね)

『これまでの自分を否定するなんて愚かなこと』『自分をもっと愛しなさい』――どれも、今の那智が受け止めるには重すぎる言葉だった。

(それに――ここにこうしてるハメになったのだって、天童せんせいのせいだしさ)

そう。那智が真夜中の寒空の下、バイクを走らせこんな所までやって来たのは、天童から出された卒業制作について悩んだ挙げ句の行動だった。

『卒業後の自らの光を像として表し提出なさい!』と宣告された課題を、那智はまだ提出できずにいる。

何の像を作ればいいのか、わからなくなってしまったからだ。

一旦は完成間近まで制作したのだが、そこへ現れた真奈美や生徒会役員たちには、那智が作っていた像が何なのかわかってもらえなかった。

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